縁切り、タスペーサーとは何か?全ての屋根塗装において必要なのか?塗装の専門家が解説します。

  • 愛知県の塗装職人 会社名:リッショウ株式会社
    立野 晶弘
    所在地:愛知県名古屋市南区上浜町14


「縁切り(えんきり)」「タスペーサー」、どちらも聞きなれない言葉かもしれませんが、屋根塗装の話の際この2つの単語は割と良く出てきます。
屋根塗装をご検討中の方は「縁切り」「タスペーサー」の意味を知っておいていただけると見積もりの際に話がスムーズに進むと思いますのでご説明します。

縁切りは屋根を塗装した際に行う作業です

縁切りとは薄型化粧スレート屋根(スレート瓦)、商品名で言うとカラーベストやコロニアルの屋根の塗り替え時に必要な作業です。
どういうことをするかと言うと、従来は塗装後の一枚一枚引っ付いた屋根をカッター等で切っていくという地道な作業でした。


▲カッターによる縁切り作業
現在はタスペーサーという部材の挿入で縁切り作業を行う場合が増えました。これについては後ほど詳しくご説明します。


▲タスペーサーによる縁切り作業

カッターによる縁切り、タスペーサーによる縁切りいずれにしても屋根と屋根の間に隙間を作る作業だと思っていただけるといいでしょう。

屋根と屋根の間に隙間を作ると雨漏りするのではないか?
いい質問です。
実は逆に屋根と屋根との間に隙間がない方が雨水の排出先がなくなるので危険なんです。

縁切りの効果

  • その1)雨漏りを防ぐ
縁切りをする最も大事な理由は雨漏りを防ぐためです。

雨水は・強風時・大雨など想定外の雨が降ったときには構造上屋根材の下にも入り込むものです。
ですから入った雨水をどうやって排出するかが重要です。
縁切りが必要な薄型化粧スレートの屋根材は表面に溝があり、この溝は屋根材の下に雨水が侵入した際に排出します。

しかし屋根塗装をすることでこの溝を塗料でふさいでしまうことがあり、そうすると雨水の逃げ場がなくなるので屋根下地の腐食、ひいては雨漏りに繋がるのです。

▲塗料でふさいではいけない屋根材の重なり部分

▲雨漏りにより屋根が腐食するとこのようになります
  • その2)内部結露を防ぐため
結露ができる仕組みをご存じでしょうか?
結露は物質の内側と外側の気温差が生じた際に発生します。
このことを屋根に当てはめて考えます。
建物内の暖かい空気は上昇する性質があり、天井を通して屋根裏まで上昇します。

一方屋根の外側は外気と接しているので日中は熱さに、それ以外の時間は寒さにさらされています。
屋根の内側が温まり、屋根外側が冷える…これにより結露が発生します。
縁切りで屋根に隙間を作らないと屋根裏で内部結露した水分がたまってしまい、中の断熱材や木材を腐らせてしまうのです。

カッターによる縁切りの問題点


縁切りはこんなにも大事な作業ですが、実は行われていないことがかなり存在します。
理由は地道で手間がかかる作業であり、足場を解体したらわからなくなってしまうからです。
その他にも従来のカッターでの縁切りの問題点をあげると…。

  • 屋根塗装の際にせっかく仕上げた塗装を傷つけ、屋根を汚してしまうことがある
  • 何百枚もの屋根材に作業をするので手間も時間もかかる
  • 時間と手間がかかる=お客様にとってもコストが上がることにつながる

  • つまり縁切りとは簡単な作業ではないのにリスクがある。
    ですから大事な作業であるにもかかわらず見た目の変化がわからないため省略する業者が存在するのです。

カッターでの縁切りの問題点を解消したのが「タスペーサー」


このカッターでの縁切りにおける従来からの問題点を解消したのが「タスペーサー」です。
タスペーサーとはセイム社から販売されている商品の名前です。

▲このような形状をしています。
タスペーサーは下塗りが完了した時点で屋根と屋根の間に入れることで隙間を作ります。

▲これがタスペーサーの施工画像です。
タスペーサーを挿入することで屋根と屋根のとの間に隙間が確保されるため、カッターによる縁切り作業をする必要がなくなります。

加えて

  • カッターによる縁切りよりもタスペーサーを挿入する方が時間がかからない
  • 時間短縮=人件費という一番のコストも抑えられる
  • 綺麗に塗装した上を汚すこともない

  • いいことずくめなので従来のカッターの縁切りではなく、タスペーサーの挿入で縁切りの工程を行う場合が多いです。

タスペーサーの挿入の推奨条件

▲赤い〇で囲んでいる範囲が屋根の両端になります。

一枚の屋根剤につき2枚のタスペーサーを挿入します。
これはタスペーサー製造メーカーセイム社もそう推奨しており「ダブル工法」と呼ばれています。

タスペーサーの挿入は全てにおいて必要ではない

先ほどタスペーサーを「絶対条件ではない」と書きました。
実は必要じゃない場合があるのです。

  • 屋根に4mm以上の隙間がある場合

  • この場合は縁切りによるタスペーサーが必要ありません。
    隙間が広いためタスペーサー自体を挿入しても固定されず落ちてきます。
    また同じ1軒の家においてすべての屋根にタスペーサーが必要かと言えばそうでもありません。
    例えば紫外線の当たる方角の屋根は反ってくるので自然と隙間が空き、タスペーサーは不要だけど、他の方角の屋根は隙間がないのでタスペーサーが必要だという具合です。

タスペーサーの項目がない=信頼できない業者ではない

インターネットが普及して屋根塗装に関しても以前よりは情報が知れ渡るようになりました。
縁切りやタスペーサーのことをインターネットで知り、屋根塗装の見積書を見て「タスペーサーの項目がないからこの業者は大丈夫なのか?」そういう疑問をお持ちになる方も多いようです。

タスペーサーによる縁切りは必要な工程です。
ただしすべてにおいて必要かと言えばそうでもありません。
これはここまでご説明した通りです。
見積書にタスペーサーの項目がない=信頼できない業者ではないのです。

まとめ

  • 縁切りは屋根塗装の際に行う欠かせない工程だがカッターによる施工はリスクも多く手間もかかるので省いてしまう業者がいる
  • カッターでの縁切りの問題点を解消したのが「タスペーサー」であり、現在は縁切りの工程はタスペーサーで行うことが多い
  • タスペーサーを挿入する必要のない場合も存在するのでタスペーサーが見積もりの項目にない=信頼できない業者ではない

  • これはタスペーサーに限った話ではなく一つ一つの項目に対してなぜそれが必要なのかをきちんと説明してくれる業者が信頼できることの第一条件ではないかと思います。
素材・写真提供
  • 完成後も、10年後も美しく 会社名:有限会社 永建工業
    永濱 正明
    所在地:大阪府東大阪市長田2-12-5-102
  • 千葉県の塗装職人 会社名:ハウスリペイント 佐々木塗装
    佐々木 恒治
    所在地: 千葉県館山市正木1103-1